車は10万kmを超えると価値が下がる?11万件超の査定データで『10万kmの壁』を検証
「車は10万kmを超える前に売った方がいい」
中古車について調べていると、一度は聞いたことがある話ではないでしょうか。
実際、中古車市場では「10万km」がひとつの節目として語られることがあります。
では、本当に車の価値は10万kmを超えたところで急に下がるのでしょうか。
例えば、
7万km → 8万km → 9万km → 10万km → 11万km
と、走行距離が増えるごとに順番に価値が下がっているだけなら、「10万kmの壁」と呼ぶのは正確ではありません。
反対に、7万km、8万km、9万kmまでは比較的緩やかに推移しているのに、10万kmを超えたところだけ大きく下がるのであれば、「10万kmの壁」が存在すると考えられます。
さらに、もしかすると大きな価格変化が起きるのは10万kmではなく、8万kmや9万kmかもしれません。
そこでユーポスでは今回、2022年1月から2026年7月までの一般来店査定データ11万件超を使い、走行距離と車両価値の関係を分析しました。
さらに、全体データだけでは見えない「型による違い」を確認するため、ノア、アルファード、ハイエースについては対象車種の査定データを追加で分析しています。
その結果、「10万kmの壁」はすべての車に共通する一本の境界線ではないことが見えてきました。
本記事では「査定価値指数」で比較します
本記事では個別の査定額そのものは掲載せず、ユーポスFC本部が市場相場などをもとに算出した車両価値を指数化して比較します。
型別分析では原則として「走行距離9~10万kmの車両価値中央値=100」とし、7~8万km、8~9万km、10~11万kmなどがどの程度の水準だったのかを比較しています。
査定価値と実際の買取価格は異なります。
本記事で使用する車両価値は、ユーポスFC本部が年式、走行距離、グレード、装備、市場相場などから算出したものです。実際にお客様へ提示される買取価格は、車両状態、再商品化費用、店舗運営上の利益、市場変動リスクなども考慮して決定されます。
この記事で検証すること
結論|「10万kmになった瞬間、一律で大きく下がる」とは言えなかった
今回の分析でまず確認できたのは、走行距離が増えるほど車両価値は全体として低くなるということです。
しかし、7万km台から順番に追うと、10万kmを超えたところだけが突出して大きく下がっているわけではありませんでした。
一般来店査定データ全体では、9~10万kmの中央値を100とすると、おおむね次のように推移します。
| 走行距離 | 査定価値指数 | 前の距離帯からの変化 |
|---|---|---|
| 7~8万km | 約150 | ― |
| 8~9万km | 約127 | 約15.6%低下 |
| 9~10万km | 100 | 約21.1%低下 |
| 10~11万km | 約87 | 約13.3%低下 |
| 11~12万km | 約77 | 約11.5%低下 |
| 12~13万km | 約77 | ほぼ横ばい |
| 13~14万km | 約73 | 緩やかに低下 |
| 14~15万km | 約67 | 緩やかに低下 |
※全車種を含む単純集計。年式・車種等の構成差を含むため、走行距離だけの影響を示すものではありません。
ここで重要なのは、10万kmを超える10~11万kmへの変化が最大ではなかったことです。
単純集計では、むしろ8~9万kmから9~10万kmへ移るところの下落率が約21%と最も大きくなりました。
実際の相場は「99,999kmと100,000km」で突然切り替わるほど単純ではない
全体では7万km台以降から段階的に評価が低下しており、10万kmに到達する前から市場が走行距離を織り込んでいる可能性があります。
では「10万kmの壁」という言葉は間違いなのか?
必ずしもそうではありません。
全車種をまとめた単純集計には、さまざまな年式・車種が混在しています。
そこで車齢、車種、査定された時期などの違いを考慮した分析も行ったところ、10~11万kmの車両は9~10万kmと比較して、おおむね9~10%低い傾向が確認されました。
つまり10万km前後に一定の価格差が存在すること自体は確認できます。
ただし、
「すべての車が10万kmを1kmでも超えると、一律で大きく値下がりする」
という意味ではありません。
型別に7万km台から価格曲線を追うと、その違いがさらに明確になります。
同じノアでも「壁」の位置と強さが違った
ノアについては、2025年1月から2026年7月までの査定データ1,093件を型別に分析しました。
10万km前後だけを見るのではなく、7万km台から15万km超までの流れを追うと、世代ごとの違いがかなり鮮明です。
60系ノア|7万~20万kmまで大きな価格の崖は見えない
60系では、9~10万kmを100とすると、
- 7~8万km:約93
- 8~9万km:約96
- 9~10万km:100
- 10~11万km:約89
- 11~13万km:約115
- 13~15万km:約96
- 15~20万km:約96
となりました。
サンプル数が少ない距離帯もあるため細かな上下には注意が必要ですが、全体として10万kmを境に低い水準へ移行するような形ではありません。
現在の60系ノアでは、10万kmという数字そのものの意味はかなり小さい可能性があります。
70系ノア|10万kmより前から下がり、15万km付近で次の変化
70系では、
- 7~8万km:約152
- 8~9万km:約114
- 9~10万km:100
- 10~11万km:約109
- 11~13万km:約97
- 13~15万km:100
- 15~20万km:約76
でした。
7~8万kmから9~10万kmまでの段階ですでに大きく低下しています。
ところが10~11万kmでは109となり、10万kmを超えたことによる明確な値下がりは見えません。
その後、15~20万kmでは約76まで低下しています。
70系では「10万kmの壁」というより、10万kmより前から相場調整が進み、15万km前後に別の節目があると見る方が実態に近そうです。
80系ノア|10万km前後の段差が比較的明確
80系では、
- 7~8万km:約117
- 8~9万km:100
- 9~10万km:100
- 10~11万km:約83
- 11~13万km:約65
- 13~15万km:約56
- 15~20万km:約55
となりました。
ここで注目したいのは、8~9万kmと9~10万kmがほぼ同水準であることです。
ところが10~11万kmになると約83まで低下しています。
80系ノアでは「8~9万km=100 → 9~10万km=100 → 10~11万km=約83」となり、今回分析した型の中では「10万kmの壁」が比較的分かりやすく表れました。
アルファードも7万km台から追うと、世代ごとの違いが鮮明
アルファードについては、2025年1月から2026年7月までの査定データ3,308件を世代別に分析しました。
10系アルファード|7万kmから20万km超までほぼ横ばい
- 7~8万km:約92
- 8~9万km:約108
- 9~10万km:100
- 10~11万km:約104
- 11~13万km:約96
- 13~15万km:約92
- 15~20万km:約92
- 20~30万km:約92
10系アルファードは非常に特徴的です。
10万kmどころか、20万kmを超えても指数は約92。
今回のデータを見る限り、現在の10系アルファードでは、走行距離の違いより「10系アルファードという商品そのもの」の市場価値が強く価格を支えている可能性があります。
20系アルファード|10万km以前から下がり、10万km超でもう一段低下
- 7~8万km:約119
- 8~9万km:約93
- 9~10万km:100
- 10~11万km:約76
- 11~13万km:約66
- 13~15万km:約54
- 15~20万km:約47
20系では7~8万kmから8~9万kmの段階でも大きく低下しています。
したがって10万kmだけが唯一の壁ではありません。
一方、9~10万kmの100から10~11万kmでは約76となり、10万km前後でもう一段大きく下がっています。
10万km以前から相場調整が進み、10万km超でもさらに下がるタイプと言えそうです。
30系アルファード|7万km台から段階的に下がる
- 7~8万km:約127
- 8~9万km:約113
- 9~10万km:100
- 10~11万km:約91
- 11~13万km:約86
- 13~15万km:約98
- 15~20万km:約74
30系では、7万km台から11~13万kmまで比較的段階的に低下しています。
10万kmを超えたところでも約9%低下していますが、その前からすでに価格調整は進んでいます。
30系アルファードでは、「10万kmで突然崖から落ちる」のではなく、距離に応じて連続的に評価が下がる中の一つの節目として10万kmがあると考える方が自然です。
ハイエースでは「10万km」という数字そのものの重要性が低い可能性
ハイエースについても、2025年1月から2026年7月までの査定データを分析しました。
特に200系の初期型では、10万kmを少し超えたところで価値が急落するというより、15万km、20万km、30万kmと走行距離が伸びても一定の車両価値が残る傾向が確認されています。
ハイエースは一般的な乗用車とは用途が異なります。
国内の商用需要に加えて海外でも需要があり、多走行車でも市場で評価されるケースがあります。
こうした車では、走行距離だけでなく、
- 型式
- エンジン
- ディーゼル/ガソリン
- 2WD/4WD
- ボディ形状
- 国内外での需要
などが価格形成に強く影響します。
そのため、「9万9,000kmだから高い、10万1,000kmだから大きく安い」という評価になりにくい型も存在すると考えられます。
「10万kmの壁」は一本の線ではない
ここまでの結果を見ると、「10万kmの壁」を100,000kmという一本の線として考えるのは少し単純すぎます。
全体データでは、10万km突破より前の8~9万kmから9~10万kmへ移るところで最も大きな低下が確認されました。
型別でも、30系アルファードのように7万km台から段階的に下がる車があります。
一方80系ノアでは、8~9万kmと9~10万kmがほぼ同じ水準なのに、10~11万kmで大きく低下しました。
そして10系アルファードでは、10万kmを超えても20万kmを超えても指数が大きく変わっていません。
「10万kmの壁」は、すべての車に共通する一本の境界線ではありません。型によって、10万kmで大きく落ちる車もあれば、それ以前から下がる車、10万kmを大きく超えてもほとんど変わらない車もあります。
なぜ型によって走行距離の影響が違うのか
今回の査定データだけから、その原因を一つに断定することはできません。
ただし、中古車の価値は国内の一般ユーザーからの需要だけで決まるものではありません。
車によっては、
- 国内中古車としての小売需要
- 海外輸出
- 商用需要
- 業者間取引
- 特定の型式・エンジン・仕様への需要
- 部品需要
など複数の市場から評価されます。
例えば、国内ユーザー向け中古車としての商品性が重要な型では、「走行距離10万km未満」という分かりやすさが価格に影響する可能性があります。
一方、海外需要や商用需要が強い型では、10万kmという数字よりも、型式やエンジン、仕様そのものの需要が価格を支える場合があります。
同じ車種でも世代によって距離の影響が異なったのは、こうした現在の市場ポジションの違いも関係している可能性があります。
「10万kmになる前に絶対売るべき」とは言えない
今回の分析結果から、「10万kmになる前に絶対売らなければ損」と一律に考える必要はありません。
確かに、80系ノアや20系アルファードのように、10万km前後で比較的大きな価格差が見られる型は存在します。
一方、10系アルファードのように、10万kmどころか20万kmを超えても査定価値指数が大きく変わらない型もあります。
また30系アルファードのように、10万kmだけが特別なのではなく、7万km台から段階的に価値が下がっている車もあります。
つまり重要なのは、
「あと何kmで10万kmになるか」だけではなく、「自分の車の型では、走行距離がどのように価格へ影響しているか」です。
10万kmを超えても、車の価値がなくなるわけではない
10万kmは、車の価値がゼロになる境界ではありません。
今回の分析でも、15万km、20万km、30万kmを超えた車に一定の車両価値が残っているケースは多数確認されています。
特にハイエースや一部の旧型トヨタ車など、国内外で独自の需要を持つ車では、多走行だからといって直ちに価値がなくなるとは限りません。
「10万kmを超えたから、もう値段は付かないだろう」と自分で判断してしまうのは早いかもしれません。
よくある質問
Q. 10万kmを超えた瞬間に査定価値は大きく下がりますか?
すべての車で大きく下がるわけではありません。全体データでは、むしろ8~9万kmから9~10万kmへの下落幅の方が大きくなりました。一方、80系ノアのように10万km前後で明確な差が出る型もあります。
Q. では「10万kmの壁」は存在しないのですか?
存在しないとも言えません。10万km前後で価値が一段下がる型は実際に確認されています。ただし、すべての車に共通する固定された境界ではありません。
Q. 9万km台なら10万kmになる前に売った方がいいですか?
型によります。10万km前後の価格差が大きい型なら判断材料になりますが、10万kmがほとんど価格に影響していない型もあります。走行距離だけで売却時期を決めるのはおすすめできません。
Q. 10万kmを超えた車でも売れますか?
売却できる可能性は十分にあります。今回のデータでも、15万km、20万km、30万km以上走行した車に一定の車両価値が残るケースが多数確認されています。
まとめ|「10万kmの壁」は本当にある?実際には車によって全く違う
今回、2022年1月から2026年7月までの一般来店査定データ11万件超と、ノア、アルファード、ハイエースの追加査定データを分析しました。
全体としては、走行距離が増えるほど車両価値が低くなる傾向があります。
ただし7万km台から順番に見ると、10万kmを超えたところだけが最大の下落ではありませんでした。
全体の単純集計では、むしろ8~9万kmから9~10万kmへの変化が最も大きくなっています。
そして型別では、さらに違いがありました。
- 60系ノア:7~20万kmで大きな価格の崖は見えない
- 70系ノア:10万kmより前から調整が進み、15万km付近で次の低下
- 80系ノア:8~10万kmはほぼ同水準だが、10~11万kmで大きく低下
- 10系アルファード:20万km超でも指数は約92
- 20系アルファード:10万km以前から下がり、10万km超でもう一段低下
- 30系アルファード:7万km台から段階的に価値が低下
- ハイエース初期型:10万kmだけが特別な境目とは言いにくい
「10万kmの壁」はすべての車に共通する一本の線ではありません。型によって、10万kmで大きく落ちる車もあれば、それ以前から下がる車、10万kmを大きく超えてもほとんど変わらない車もあります。
「もうすぐ10万kmだから」と走行距離だけで売却を判断するのではなく、まずは自分の車の型・年式・仕様が、現在の中古車市場でどのように評価されているのかを確認することが重要です。
調査概要
| 調査主体 | 株式会社ユーポス |
|---|---|
| 全体分析期間 | 2022年1月~2026年7月 |
| 全体分析 | ユーポス一般来店査定データ11万件超 |
| 型別追加分析 | ノア、アルファード、ハイエースの査定データ |
| 査定価値指数 | 原則として各型の9~10万km帯における車両価値中央値を100として指数化 |
| 査定価値 | ユーポスFC本部が市場相場等をもとに算出した車両価値。実際のお客様への買取提示額とは異なります。 |
| 除外 | miles表記など、合理的な比較が困難なデータ等 |
※査定価値指数は実際のお客様への買取提示価格を示すものではありません。
※各距離帯には年式、グレード、駆動方式、装備、車両状態等が異なる車両が含まれます。指数差が走行距離だけによって生じたことを示すものではありません。
※型別で対象台数が少ない距離帯については、個々の仕様や状態による影響を受けやすいため、傾向を見るための参考値として扱っています。
※本調査はユーポスにおける査定データを集計・分析したものであり、中古車市場全体の取引価格を示すものではありません。
※実際の車両評価・買取価格は、年式、型式、グレード、車両状態、修復歴、ボディカラー、装備、走行距離、市場環境等によって異なります。






