車は何月に売ると高い?実査定データで査定額の季節性を検証
「車を売るなら1~3月が高い」
車の売却時期について調べると、このような情報を目にすることがあります。
理由としてよく挙げられるのが、就職や転勤、引っ越しなど新生活に向けて車を購入する人が増えること。また、自動車業界では3月を決算期とする企業も多く、販売市場が活発になるため、買取価格も上がりやすいという考え方です。
では、実際の査定価格にも「高く査定されやすい月」は存在するのでしょうか。
ユーポスでは、2022年9月~2026年8月の実査定データを使い、車種・型式や年式、走行距離などの違いを調整したうえで、査定月によって査定価格にどの程度の差が見られるのかを分析しました。
査定価格には月による一定の傾向が確認されました。今回のデータでは春先がやや弱く、晩夏~秋にかけて比較的高い傾向が見られています。
一方で、「1~3月なら必ず高い」「○月まで待てば得をする」と言えるほど単純な結果ではありませんでした。
「1~3月は車が高く売れる」は本当?
1~3月が車の売り時といわれることには、それなりの理由があります。
春は就職、進学、転勤、引っ越しなどによって生活環境が変わる人が多く、車の購入需要も動きやすい時期です。
さらに3月は決算期とする自動車関連企業も多いため、販売台数を伸ばそうとする動きが活発になることがあります。
こうした背景から、
という説明がされることがあります。
理屈としては分かりやすいものです。
しかし、中古車の価格は需要だけで決まりません。中古車市場に流通する車の量や、買取店・販売店側の在庫状況、個別車種の需要など、さまざまな要因が同時に動きます。
そこで今回は、こうした一般論ではなく、実際に算出された査定価格から検証しました。
実査定データで見る「査定月による価格差」
単純に各月の平均査定価格を比較すると、月によって査定された車種や年式、走行距離などが異なるため、正確な比較になりません。
そこで今回の分析では、十分なデータを確保できた248型式について、車齢や走行距離、評価点など査定価格に影響する条件を調整し、それぞれの型式で査定月による価格差を算出しました。
その結果を型式単位で集計した中央値が以下です。
| 査定月 | 補正後の価格差 | プラスだった型式の割合 |
|---|---|---|
| 1月 | +0.1% | 50.4% |
| 2月 | +0.8% | 58.5% |
| 3月 | -0.6% | 41.5% |
| 4月 | -3.8% | 17.7% |
| 5月 | -3.0% | 23.4% |
| 6月 | -1.2% | 42.3% |
| 7月 | -1.1% | 39.9% |
| 8月 | -0.3% | 48.0% |
| 9月 | +3.7% | 79.0% |
| 10月 | +4.1% | 75.4% |
| 11月 | +2.0% | 69.0% |
| 12月 | +0.9% | 58.5% |
※数値は個別車両の査定価格がこの割合だけ上下することを意味するものではありません。条件を調整した各型式の月別価格差を集計した中央値です。
本調査で分析しているのは、ユーポスで算出された「査定価格」です。オークション等で実際に売買された価格を月別に比較したものではありません。したがって、この結果をそのまま「○月の中古車市場全体の相場」と読み替えることはできません。
意外にも「1~3月が高い」とはならなかった
まず注目したいのが、一般に高く売りやすいといわれる1~3月です。
今回の結果では、1月が+0.1%、2月が+0.8%、3月が-0.6%でした。
少なくとも今回の実査定データからは、「1~3月だから査定価格が明確に高くなる」という傾向は確認できませんでした。
これは、「1~3月は車の需要が増える」という考え方そのものを否定する結果ではありません。
中古車の価格には需要だけでなく、市場へ供給される車の量、販売店や買取店の在庫状況、車種ごとの需給なども関係します。
需要が増える時期に供給も増えれば、一方向に価格が上がるとは限りません。
「春は需要期だから高い」という説明だけでは、中古車の査定価格を十分に説明できないことが今回のデータからも分かります。
4~5月は査定価格がやや弱い傾向
今回のデータで比較的はっきりした特徴が見られたのが4月と5月です。
4月は-3.8%、5月は-3.0%となりました。
さらに、248型式のうち査定価格がプラス方向だった型式は、4月が17.7%、5月が23.4%でした。
つまり、一部の車種だけが平均を押し下げたというより、多くの型式で春先の査定価格が弱い方向に出ています。
背景には、3月までに中古車の流通量が増えたことや、販売店・買取店側の在庫状況、仕入れ意欲など、複数の要因が考えられます。
ただし、今回のデータだけから「○○が原因で4月の査定価格が下がる」と因果関係まで特定することはできません。
今回のデータでは9~11月が比較的高かった
反対に、今回の4年間のデータで比較的高い査定価格が確認されたのが9~11月です。
9月は+3.7%、10月は+4.1%、11月は+2.0%となりました。
特に9月は248型式の79.0%、10月は75.4%でプラス方向となっています。
そのため今回のデータでは、春よりも晩夏~秋にかけて査定価格が比較的強い傾向が確認されました。
ただし、ここから「車は10月に売るのが一番得」と結論づけることはできません。
今回確認された差はあくまで4年間のデータを統計的に集計した傾向であり、毎年同じ動きをするとは限らないからです。
中古車の需給や個別車種の人気、輸出需要などは年によって変化します。
「年末は安い」とも限らない
車の売却については、「年末は査定価格が下がりやすい」というイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし今回のデータでは、12月は+0.9%でした。
少なくとも今回の調査では、「12月だから査定価格が安い」という傾向は確認されませんでした。
中古車市場では、需要だけでなく供給量も価格に影響します。
売り物となる中古車が少ない時期には、需要がそれほど強くなくても、仕入れたい車を確保するために価格が維持されることも考えられます。
そのため、「年末=売れない=安い」と単純に考えることはできません。
では「高い月」まで待って売った方がいい?
ここまでの結果を見ると、
「4月より10月の方が約8%高いなら、10月まで待った方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、このような計算を個別の車にそのまま当てはめることはできません。
今回の数値は多数の車を分析した結果として現れた月ごとの傾向です。
中古車は一物一価性が非常に高く、実際の査定価格には、査定月以外にも次のような要素が影響します。
- 車種・型式
- 年式
- 走行距離
- グレード
- ボディカラー
- 内外装の状態
- 装備・メーカーオプション
- 修復歴
- その車種の在庫量や需要
- 海外への輸出需要
- 輸出先の規制や制度変更
こうした条件による価格差が、月による平均的な差を大きく上回ることもあります。
数か月待っている間にも、車の価値は変わる
さらに重要なのが、売却時期を待っている間にも車の条件が変化することです。
たとえば、
「春は安そうだから、秋まで半年待とう」
と考えたとしても、その半年の間に車齢は進み、走行距離も増えます。
ユーポスの実査定データを使った別の調査でも、年式や走行距離によって査定価格が変化することを確認しています。
車は何年落ちで査定額が下がる?約7.7万件の実査定データで「年式の壁」を検証
車は10万kmを超えると価値が下がる?11万件超の査定データで「10万kmの壁」を検証
つまり、数%の季節差を狙って売却を待っている間に、別の要因で査定価格が変わる可能性もあります。
個別の1台では「何月か」だけでは決まらない
今回の分析では、月による査定価格の傾向が確かに確認されました。
しかし、実際に1台の車を査定するときには、平均的な季節性よりも個別の事情が大きく影響することがあります。
たとえば、同じ型式でも人気グレードや人気色であれば評価が変わりますし、その時点で販売店が特定の車種を仕入れたい状況にあれば、査定価格にも影響する可能性があります。
輸出需要の強い車では、海外側の需要や規制変更によって短期間で評価が変わることもあります。
そのため、
「今、この1台はいくらで評価されるのか」を確認することが重要です。
売却時期を考える際には、カレンダーだけで判断するのではなく、その時点の査定価格を確認したうえで判断する方が現実的といえるでしょう。
調査方法について
| 対象期間 | 2022年9月~2026年8月 |
|---|---|
| 使用データ | ユーポスの実査定データ |
| 月別分析 | 比較条件を満たした248型式 |
| 主な調整項目 | 型式、車齢、走行距離、車両評価など査定価格に影響する条件 |
単純な月別平均では、たとえば「10月に高額車の査定が多かった」というだけで10月の平均査定額が高くなってしまいます。
そこで今回の分析では、同じ型式の中で車齢や走行距離などの条件を調整し、査定月による価格差を算出しました。
本調査は、査定月と査定価格の関係を統計的に分析したものです。「4月だから査定額が下がる」「10月だから査定額が上がる」という因果関係を証明するものではありません。
また、中古車は車両ごとの差が非常に大きく、グレード、色、装備、状態、修復歴、個別車種の需給、輸出需要など、データ上完全には調整できない要素があります。
掲載している割合を、個別車両の査定価格にそのまま加算・減算することはできません。
まとめ|高く査定されやすい時期はあるが、「売るべき月」は一律ではない
今回、ユーポスの実査定データから査定月と査定価格の関係を分析したところ、月による一定の傾向が確認されました。
一方、一般にいわれる「1~3月は高く売れる」という傾向は明確ではなく、今回のデータでは4~5月が比較的弱く、9~11月が比較的高い結果となりました。
また、12月についても「年末だから安い」という結果にはなっていません。
ただし、これを「10月まで待てば高く売れる」という意味で捉えるのは適切ではありません。
中古車の査定価格は、年式、走行距離、グレード、色、状態、装備、その車種の需給、輸出需要など、多数の条件によって決まります。
月による傾向は存在しても、個別の1台ではそれ以上に大きな要因がいくつもあります。
高く売れそうな月を待つことだけを考えるのではなく、売却を考え始めた時点で一度査定価格を確認し、その金額を見て売却時期を判断するのが現実的でしょう。






